映画『インヒアレント・ヴァイス』

ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の新作、ギリギリで観てきました。予想外に面白く2時間半もあるのに眠くなるようなスキは与えない。それだけ良くできているということで、キャストも興味深い。前作「ザ・マスター」に続きホアキン・フェニックスが主演ですが、まるっきり別人。変装シーンが楽しそう。 

トマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』が原作。ちなみに小説の原題も「Inherent Vice」で、「マイアミ・バイス」みたいな安っぽい邦題にしてしまったのは大失敗だと思う。映画の中でもちゃんとこのタイトルについての説明があり、安易に『LAヴァイス』にしなかった映画会社の賢明な判断を評価したいです。

>原題の「inherent vice」は保険用語であり、「もともとの固有の性質として備わっている」という意味。例えば疲労亀裂などでものが破損した場合、それはもともとそれが固有の性質として破損したことになるので、保険会社は保険料の支払いを拒否することができる。本文中では「LAを船に見立てて、その海上保険契約を書くとしたら、地震源のサンアンドレアス断層は、その船に「固有の瑕疵」ということなる」と触れられている。「inherent vice」という言葉は同じポストモダン作家ウィリアム・ギャディスの小説『認識』にも出てくる。

『重力の虹』を買ったけど読んでいない・・・ピンチョンは難解なイメージあったけど、この小説はそうでもない。ワケが分からないのは確かですが、疾走感がある。あ、そうか。タランティーノの『パルプ・フィクション』に近いんだ。 

PTAの最近の作品は、同じくホアキン・フェニックス「ザ・マスター」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」がいずれも硬派で重苦しい作品だったので、そういう意味でも軽くて、良かったです。元カノを取り戻すことは出来ないけど、代わりに1つ善行も積むし後味も悪くない。

PTAは1970年生まれでまだ44歳。なのにこの映画の舞台になっている1960年代末のファッションや雰囲気を完璧に再現していると思う。これは、1970年代末から1980年代前半のポルノ業界の光と影にスポットライトを当てた作品「ブギー・ナイツ」でもそうだったけど。

あと、女性の顔にはかなりこだわりというか好みがあるのかも。しもぶくれ系が好み?今回のキャサリン・ウォーターストンは35歳には見えないな。


http://wwws.warnerbros.co.jp/inherent-vice/